人はいくつになっても
土への憧れは止まりません。
幼いころ夢中になって泥んこ遊びをした時のように、大人になった今も土に触れると自然に心がほぐれ、夢中になると心が解放された気持ちになります。
何もないところから自然の粘土で作って焼成された器には、土のもつぬくもりや温かみがあり心を癒してくれるものがあります。心を込めて作った自分の手作りの器でご飯を食べたりお茶を飲んだり、又野草をテーブルに飾ったりできたとしたら、どれだけ心豊かな人生になることでしょう!
吉祥窯は、土を楽しむ“くらし文化”の魅力を皆さんに伝えたいと思っています。
※山口県は、焼き物と言えば萩焼がよく知られるところですが、萩焼の粘土は大道土という特色ある土で、多くはこの防府市の大道というところで採掘されているものです。粘土の産地としてもっともっと焼き物文化がより身近なものとして普及し根付いていってほしいと願っています。
吉祥窯 窯元
理事長 横山 知子
Tomoko Yokoyama
幼い頃から骨董好きだった父親に古めかしい大きなご飯茶碗で毎晩のように苦い濃いお茶を、強引に付き合わされて、飲み終わったあとに必ずお茶碗をひっくり返して「ここを見てみろ!このざくっとした土が見せてあるのがいいじゃろう」と・・・
今なら糸切り底の志野茶碗の髙台を父は自慢気に講釈していたのだと分かりますが、あの頃は苦いお茶がどうしてそんなにおいしいのか、ただただ理解に苦しむだけでした。
大人になって記憶をたどってみると、あの頃があったからこそ、知らず知らずのうちに私の土への憧れは始まっていたのだとはっきりと気付かされます。
山で土を掘り、その土に力を込め、魂を込め、技を込めて器を焼いたら計り知れない程あったかい命が宿ります。
“あたらしく生まれてくるこの小宇宙を私の手のうちで造りたい・・・
いつも傍らに置く器をめざします“(吉祥窯 栞より)
横山知子